トップまつたに位牌職人シリーズ part2(下地) 「今がベストではない。常に上を目指して」

まつたに位牌職人シリーズ part2(下地) 「今がベストではない。常に上を目指して」

徹底的に品質の向上。高みを目指して

 社歴とこれまでの仕事を教えてください。

sitazi1  社歴は20年です。以前は製造業の会社を中心に転々としていました。学校卒業後はまず、鞄の製造をしていました。ランドセルをミシンで縫ったりもしていました。その後は、基盤の製造、車の部品の検品といったような経験をしました。思い返してみると、小さいころからモノを作るのが好きでした。昔は、ゲームもなにもないので遊び道具は竹などを使って、自分で作っていました。また山奥で自分たちの秘密基地を木で作ったり、スキーの板まで作って滑って遊んだり、そんな子供でした。そのため、製造業に携わってきたのは自然な流れと思います。

入社後と、これまでの仕事を教えてください。

“まつたに”へは新聞の広告を見て、家から近そうだったので応募しました。入社後すぐ、下地の部署に配属され、下地の吹き付けを練習するように言われました。下地とは最終の塗り上がりを左右する工程で、非常に重要なものです。ここを丁寧に行うことで、鏡のような美しい仕上がりになります。
入社から数年たって、私が下地の職長になりました。位牌の海外製品がシェアを高めていった当時、「品質を上げなければ、“まつたに”の独自性がなくなる」と社長が言い、そこから品質改革の厳しい取り組みが始まりました。改革当初は本当に大変でした。下地工程が不十分なために、せっかくの彫刻が塗上がり後に埋まってしまうといった市場に出せない不良品が多くでました。受注があるのに良い品物がなかなか出来上がらない上に、人員は少ない、仕事がどんどんと貯まる、といった具合の悪循環でした。ひどい時は22時、23時まで仕事をしていました。今では考えられないですよね。それくらい必死でした。その時の私は改革のためには『考える力の向上』、及び『職場の人間関係の向上』が必須と考えました。

品質向上の改革の中で印象的だった出来事はありますか?

ある日、上層部からある製品の品質改善に向けて、考えるように言われました。私はメンバーを集めて、意見を求めました。しかし、何も返ってきませんでした。「なんでもいいから考えて」と言っても、その時は何も返ってきませんでした。後日、「紙に書く形でいいから考えてほしい」と言いました。すると、ちらほら意見が出てきました。私はそれから、小さなことでもいい、ほんのちょっとしたことでいいから、『考える癖』をメンバーに付けてもらうように工夫してきました。不良品が出たなど、なにか問題があれば、メンバーを集めて「この問題を解決するにはどうしたらいい?」と投げかけ続けてきました。今ではメンバーの方から「この問題があるんですけど、こうしたらどうでしょうか」と向こうから言ってきてくれるようになりました。私の方がみんなに支えられています。とても嬉しいですね。『考える力』と言うと、みんな難しく考えすぎだと思います。「右にあった道具を左に置くことで作業が早くなった」たったこれだけでも1つの進歩です。同じニュースやテレビを見ていて、ヒントになるものに気付けるかどうか。その差は周りの環境と、責任感だと思います。
人間関係については、私は部内で本当に色んなことを話します。仕事のことからプライベートなことまで多岐にわたります。製品の品質は実は、人間関係で決まるのかもしれません。それは位牌を作る職人が「あー仕事行きたくないな。」って思う会社だったら、それが職場全体に影響し、ひいては製品にまで及んでしまうと思うからです。私はそうならないような職場環境づくりを心掛けてきました。第一に思いやりですね。位牌の製造は専門職の集まりなので、隣の部署が何をしているか深く理解できていないこともありました。しかし、私は問題が出れば、関係部署の部長たちと話し合い、総合的にどうすればいいかを解決してきました。
最近うれしかったことは、部下が他部署の子たちと仲良く、そして助け合っている現場を見た時です。この環境が、“まつたに”の高い品質を作っているのだと信じています。

sitazi2後輩たちにメッセージをお願いいたします。

私が入社した頃と今では製品の完成度がだいぶ違います。昔は、今に比べ検品も比較的にやさしく、そのため製品の完成度も低かったように思います。そして、昔と今では製造工程も若干異なります。それはどうしたら、高品質な位牌になるかを追求していった結果です。今がベストだとは思っていません。まだまだ良くなると思います。今後は、それをより高みに上げていくことが使命だと考えています。さらに、私の部署で一番高度な技術を要する、吹蓮華の仕事をみんなに身に着けてもらうことです。この工程は職人の熟練した技と集中力と長い製作に要する時間が不可欠です。私はみんなに、どんどん今の作業を変えていって良いと伝えています。今より製品が良くなる方法、早く仕上げることができる方法、それらをどんどん追及していって欲しいと思っています。

そんなNさんがの技術が注がれた吹蓮華を使った製品がこちらの「極上京千倉吹蓮華 面粉」です。

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